PHOTO,VIDEO & TEXT : HIRO MURATA (TOKYONUR)
2 Times Champion – Concept Isamu Racing K20 CR Z // idlers Games 12Hours Endurance Race 2020
■Chapter.01
Clubsportsの世界における日本最長の耐久レース。それがidlers 12時間耐久レース。あらためての説明は不要だが導入として・・・
1回に給油することが可能な容量は20リッターまで。そして、1回のピットインごとに停止義務時間が設定されている。その静止時間はLotus 211といったライトウェイトスポーツカーにはハンデとして更に長い静止時間が義務付けられている。
つまり、ルーティンピット以外のピット作業をした時点で全てのプランが無となり、優勝争いから離脱することになる、実にシビアなレース戦略を必要とされるのだ。
■Chapter.02
今年最大の注目要素といっても過言ではない、ディフェンディングチャンピオンConcept/Isamu Racingのニューマシン。昨年まで使用していたDC5からCR Zに車両を変更した。
見てお分かりの通り、SpoonがThunderhill 25hに参戦していた車両だ。
更にルーツを辿ればGran Turismo 5に収録されていたアノ個体。GT6にはツインリンクもてぎも収録されているので、懐かしんで久々にプレイしてみた・・・
しかし、当時とは異なり昨今のHonda Tuningの定番ともいえるK型エンジンへのSwapを行っている。エンジン回りの作業は関西圏だけでなくAttack Tsukubaの常連でもあるASLANの手によるものだ
DC5のK20をスワップしたことによる重量増の影響よりも、ハイブリッドシステムを撤去した恩恵の方が大きいかもしれない。市販車の開発思想からは逸脱するチューニングではあるが、CR Zが本来持っていたシャシーバランスとしての素性の良さを目に付けたKoshiya-sanの嗅覚は見事といえる。
とはいえ前後重量配分が大幅に変化することになるが、ハイブリッドシステムのバッテリーとモーターが鎮座していた場所にはレース用の安全タンクが備わっている。20Lという給油制限のレギュレーションも、燃料残量による重量バランスの変化を最小限に抑える要因に繋がっているのかもしれない。決して“Spoonが作ったおさがりのレーシングカー”というわけではないのだ。
タイヤも上位陣が選択するHoosier DOT RadialではなくADVAN A050という至ってシンプルなチョイス。
積もる話は長くはなるが、2019年に開催されたkdayにOTAMA LLC – Imamura-sanのSupportとして帯同した私。OTAMA LLC Boothの隣だったのがConceptのBoothで、OTAMA LLCの”集いスポット”にてKoshiya-san(Concept)が、
“来年CR Zでレースやるんですよぉ”
と笑顔で何度もウワゴトのようにImamura-sanに話しかけていたのを思い出される。
さて、他の有力チームを見てみるとする。
新型コロナウィルスは意外なチームに影響を及ぼした。
ここ数年優勝から見放されているが、毎年優勝候補であることは間違いの無いThe Check Shop x TATSU Racing (991 GT3RS)だ。車両オーナーでもありドライバーのひとりでもある”SENSEI”はドクターだ。しかし世の中を取り巻くこの状況ではレースに参加することは出来ずSENSEIサイドは参加を断念。The Check Shopの精鋭のみでチームを運営するスタイルとなった。
そしてこちらは新型コロナウィルスの影響かは定かではないが、RWBは全車キャンセル。RWBにとってのidlers 12hは、優勝を目指してレースに挑むというスタイルではなく、世界中のRWB Familyやディストリビューターといったゲストとレースを楽しむということが近年のテーマ。しかしゲストが来日できる状況ではないため、これは賢明な判断だったと思われる。とは言ってもNakai-sanが居ない12hはちょっと寂しいね。
RWBとは別の独立したidlers Teamのみの1台となった。
このレースで最も異色と表現したくなるのがCar Guy Racingだ。AMG GT R (Roadcar)、Huracan Trofeo、Huracan GT3、NSX GT3と回をかさねるごとに純然たるレーシングカーを持ち込んでくるようになったのだ。
一見すると、”アマチュアが主役の燃費レースに金持ちが勝負を度外視したレーシングカーを見せびらかしているだけじゃないか”っと思うかもしれないが、現実は全く異なる。
確かに、燃費では圧倒的に不利なGT3車両だが着実に高順位でフィニッシュを遂げるようになってきているのだ。燃費をギリギリまで切りつめさえすれば、コーナリングスピードのボトムスピードの高さを維持することが可能なGT3車両にも勝機が見えてきたということだ。
しかし、レースカーにギリギリのレースストラテジーを要求するだけに、2018年はフィニッシュライン目前でガス欠ストップ。
因みに#77 Huracan Trofeoには、『Gran Turismo』シリーズ現役最年長の世界を代表するベテランであるYamanaka(通称yamadoo)が起用された。
■Chapter.03
スターティンググリッドはくじ引きシステム。クジ運が強すぎる2番手グリッドを獲得したのはThe Check Shop。
一方でConcept CR Zは後方グリッドからのスタートとなった。
8:00AMレーススタート。序盤でいかにしてポジションを確立するかが勝利へのカギともいるだけに、混乱こそないものの優勝候補のチームはペースをあげる。
Concept CR Zが着実にポジションをあげ、遂にはThe Check Shop GT3RS(991)の姿を捉えオーバーテイク。
そして正午にはランキングボードのトップに登り詰めた。SpoonからCR Zを”有効活用”の名のもとに入手し、勝つ為のK Swapを行い、マシントラブルを一切起こさない完璧なスケジュールでレース当日までに仕上げる。
『こんなこと、本業がレース屋でもそうそう出来ることじゃねぇ!』っと思わず興奮を覚えた。
日没前、Concept CR Zに不運なアクシデント発生する。2位以下に対して大量リードを築いていたが、Car Guy Racingの#7 Huracan GT3と交錯しフロントを小破。トップ争いをするチームとしては手痛いアクシデントだったが、ルーティンピットでリカバリー可能なダメージだったのが幸いだ。
しかし、これでCar Guy Racingの#777 NSX GT3に逆転を許すことに。
19時過ぎに日没が訪れたツインリンクもてぎ。Night Raceを表現するスポットでの撮影を終えた私はTrack Sideでの撮影を終了。(レースはまだ終わっていない。)
レース中にも関わらず撮影を終える理由は、残り時間をThe Check ShopとConcept/Isamu Racingのピットで過ごす為だ。毎年この時間帯にココにいることで、レースのクライマックスまでの流れをオサライすることが出来るのだ。
ConceptのCR Zは1分、50秒、40秒、30秒と首位をひた走る #777 NSX GT3との差を縮めていく。
タイムコントロール上では残り2分を切っていた。突如 #777 NSX GT3がペース上げた。Car Guy Racing Kimura-sanが”Fastest Lapを獲れ”という指示をドライバーに出したのだ。
コース終盤セクターの90°コーナーで複数台車両の隙間に飛び込む #777 NSX GT3。しかし、そこにスペースは無くスピンしながらグラベルでストップ。残り1周半、そしてライブタイミング上の残り時間が1分での出来事だった。
Car Guy・・・万事休す・・・リタイヤ。
数年前までは燃費レースで勝てるわけがないとまで言われていたCar Guy Racing。今年は目の前にまできていた勝利が自らの戦略によって零れ落ちていく喪失感。これもレースなのだ・・・
その瞬間はサーキットの定点カメラでも映し出されており、Conceptのピットは歓喜に包まれた。グラベルにつかまり動くことのないNSX GT3の真横をCR Zが駆け抜ける。
20:00レース終了。
劇的な幕切れで12h耐久2連覇を成し遂げたConcept/Isamu RacingのPitにCR Zが戻ってきた。
Concept/Isamu Racingのなにが優れていたのかを上げればきりがない。極めてシンプルなの要素としては、DC5で実現していたことを、CR Zでも実現することが可能だという信念ではないだろうか。
レース終了後、Concept/Isamu Racingのピットを訪れた1人のドライバーが居る。そう、Car Guy Racing代表でもありドライバーでもあるKimura-sanだ。
“最後に我々はFLを取る為にプッシュをしていたけれど、それをしていなくてもガス欠してFinishすることが出来なかったかもしれない”
“いやーこのクルマ(CR Z)、ホント素晴らしいマシンですよ”
と、自身の無念さとライバルを称えるKimura-sanの姿がそこにあった。
自身の8位というリザルトは到底納得の出来る結果ではないThe Check ShopのOtsuka-sanも絡む絡む。笑 (今年はチーム体制的にやや不利ではありましたね。)
“Le Mans 24に参戦(GTEAMクラス5位)したKimura-sanを負かししちゃうんだからKoshiya-kunっすげーよな!”
“超悔しい!自分達の順位よりもKoshiya-kunが連覇したことの方が悔しい!
“悔しいからKoshiya-kunのクルマにアテにいこうと思ったもん!”
と相変わらず饒舌っぷりである。降りてきたばかりなんですけどね(笑)
皆ライバルであり、仲間なのである。
■Bonus Movie
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